ターナー(土方)です。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
スーツにとって一番大切な部分とはどこでしょうか?
人によって、または業界人でも判断が分かれると思いますが、ボクはココが一番大切だと言えます。
ラペル(下衿)の返し
ラペルがキレイにロールしているかどうかがそのスーツの品格を如実に表現することろなのです。
ボクが作成しているオーダースーツとは、この部分を一番大切にしているのです。
たかが襟の部分でしょ?と思われるかもしれませんが、実はこれは今では結構大変で、コストがかかっているのです。
生地とか型紙とかの問題ではなくて、その中にある芯地やその据え付けとかですね、いろいろと手間をかけているのです。
実は近年のスーツの多くがコストダウンを極める為に、この部分を簡略化(簡単に作れる接着仕様)してしまい、このキレイなロールが出ない様になってしまっています。
それらとボクのスーツがどう影響しているかといいますと、結構大変なことになっていることに気が付きました。
それが今日のタイトルです。
クリーニングから帰ってきたスーツのラペルの仕上がり具合を確認してもらいたいのです。
ベタっとプレスで潰されてしまっていないでしょうか?
- ラペルを潰すクリーニングが多いのではないか?
実はボクのジャケットをとあるクリーニング店に出してみてこのことに気が付きました。
ラペルをベタって潰しているんです。
ま、ハッキリ言ってサイテーです。
おそらくスーツ、ジャケットの類を知らないのでしょう。
最初は非常に腹が立っていましたが、ふと危惧するようになりました。
今までボクがお仕立てしてきたスーツは大丈夫なのだろうかと。
潰されていないのかちょっと心配になっています。
なので確認してもらいたいと思っています。
特に2ボタンよりも3ボタン、それも段返りという真ん中しか留めないデザインを知らない業者がほとんどではないかと推察されます。
そして、ただスーツに対する知識がないだけではなく、スーツの販売そのものが安価なラペルを潰してしまう接着仕様が一般的になり、それらをクリーニングに依頼するであろう一般クリーニング店が長年にわたり潰してきて常態化しているように感じるのです。
常々スーツのメンテナンスに関しては信頼のおけるクリーニング店が良いとお伝えしていますが、そもそもその信頼に足るお店かどうかなんてわかりませんからね。
キチンとした技術と知識に基づいた仕上げをしてくれるところは年々少なくなってきていることでしょう。
今回の問題が発生した経緯はそこから発覚したのです。
問題提起だけしてもしょうがありませんので、万一つぶれていた場合の対策をお伝えしますね。
- 衣類スチーマーを使ってラペルを戻そう
衣類スチーマーでふっくらと元に戻してみましょう。
ただのアイロンから出るスチームではちょっと役不足なので、水平にスチームが出るものがおススメです。
最近は結構出回っているはずで、出来れば知名度のあるメーカーのが良い(塩を入れるとかのしょぼいのはNG)でしょう。
ハンガーにかけてラペルを立てるようにして裏側から優しくスチームを当てていきます。
プレス(押し付ける)はしないこと。
あくまでもふっくらさせることが目的です。
ポイントは裏側から優しくスチームをしていきます。
だいたいはこれで収まりますが、頑固なプレスをかけられてしまっている場合は、表側も形を整えながらスチームを当てていきます。
どうでしょうか?
段返り3ボタンの本当の姿になりましたね!
ぜひクリーニング店に出してそのままの状態で放置してしまっているようでしたら、クセになってしまう前に早めにふっくらさせておきましょう。
そして、なかなかうまくいかない場合はスタジオにお持ちください。
スタジオにはトルソー(人体ボディ)があるのでスチームを当てやすいので、ササっと戻しちゃいましょう。
- まとめ
ボクは全てのクリーニング店が駄目だとは言っていませんし、これはクリーニング店のレベル低下というだけでなくアパレル関係すべてに問題があると思っています。
最初から潰れているモノが世の中の基準のようになってしまっていれば、そうなってしまうわけですからね。
ただね、ボクが作成するスーツ類はそういう安価で大量生産するモノとは違って、失くしちゃいけない大切な部分に正しくコストをかけています。
だって見栄えが違いますからね。
自分の自信につながりますからね。
時代は益々目に見えない部分を削ることばかりに注力しているように思います。
スーツ業界においては既製品からオーダーという分野にものすごい勢いでなだれ込んでいます。
仕様も仕組みも同じなのにオーダーメイドなんですからもはや何をもってしてそうと呼ぶべきなのかすら分からないですからね。
大きな資本が入り込んでいる以上その流れは止められませんが、少なくともボクと関わって頂けるみなさんには少しでも長く快適に、そして結果を出してくれる一着であって欲しい思って、これからもこのラペルの返しのキレイな一着を作成し続けていきたいと思います。
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