土方洋(ヒジカタヒロシ)ニックネームのターナーです。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
オーダーメイドコートにおいても経年変化を楽しめるというちょっとだけマニアックなお話です。
2017年の冬に作成をしたマイコートがあります。
このバルカラーコートです。
実に使い勝手がよくて、未だに手放すどころか愛着が湧いてきています。
それは経年変化を楽しめるからです。
正統なオーダーメイドコートと言えば、それこそ一生モノというべき、丈夫で安心して着用し続けることが出来るという要素がとても重要であります。
が、あえてそうではない選択をすることも出来るのですね。
考え方としてはジーンズのようなデニム素材のような感じに近いでしょうか。
まっさらな風合いにアタリがついてくる感じです。
使い込むことによってのみ、得られるこの風合いの変化というのは実に味わいがあります。
人によって、使い方によって、そして時間経過によってさまざまに変化していく。
それらをじっくり楽しむというのもアリではないでしょうか。
ではどんな変化をしてきたかを検証してみてみましょう。
少しづつシワが入るところや襟回りやフロント部分、ステッチを入れた部分のヨレがあるところにアタリ感が出てきて、いい感じに使い込まれた風合いになってきています。
実物の感じを画像だとどうしても伝わりにくいのですが、汚れではなくて経年変化というやつです。
正直一般的ではないですし、無理してオススメ出来るものではないです。
こういうのが好きな人にはたまらないマニア向けではあります。
では、なぜこんなことが起こりえるのでしょうか?
通常の生地ではこんなことはまずないのですが、このコートに採用した生地に実は秘密があります。
オイルドコットン
そうオイルを染み込ませた高密度コットン素材を使っているのです。
有名なところだとバブアとかがありますね。
まさにアレそのものです。
現代においては当たり前な撥水や防水といったテクノロジーがまだ存在しなかった時代は織密度をギリギリまで高めた織物にオイルを染み込ませた素材を使っていたんですね。
それが現代も生産し続け存在しているのです。
このオイルが抜けていくと段々とアタリがついてきて、良い風合いになっていくのです。
これを良しとするかはあくまでも好みの問題ですし、正しいビジネスマナーとは違うカテゴリにはなります。
ただ、時代が変化を急がせている今日では、着こなしの一つとして面白いんじゃないでしょうか。
もちろんこのオイルドコットンデメリットもありますよ。
一般的なクリーニング店では取り扱えないシロモノということと、やっぱりオイルのにおいは少しします。
この辺りをどう捉えるかになりますが、好きな人には特段気にならないでしょう。
- まとめ
約3年ちょっと使っていい感じになってきました。
正直ここまでいい感じになってきたのは当初は想像出来ませんでした。
ボク個人としてはまっさらな新品状態の時よりも益々お気に入り度が上がってきていますね。
正統派の仕立屋を謳うボクのポジション的にはちょっと不真面目なコートかもしれませんが、変化を楽しめるのもこれまた一興です。
自分で風合いを育てるコート、ご興味がありましたらいかがでしょうか?
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