土方洋(ヒジカタヒロシ)ニックネームのターナーです。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
ビンテージなのかただの売れ残りなのか?
生地とうのは不思議なポジションにありまして、スーツなどに利用されない限りずっと生地と言う名の通り「生」なんです。
基本的にボクはあまりビンテージというカテゴリの生地は扱わないのですが、なかにはこのビンテージという言葉の響きに重きをおいていらっしゃる方も存じ上げています。
ではこの生地のビンテージって何なのか?というお話です。
- そもそも生地のビンテージって?
ビンテージという言葉は今では日本語として結構広く使われていますよね。
広義の意味では、年代物とか古い時代のモノ、古さに価値があるという感じでしょうか。
元々はワインの年代物というところが語源(ワインを嗜んでいないのでよく知りません)だそうです。
ビンテージの家具とかクラシックカーなどはその言葉通りでカッコ良いですよね。
では、これをオーダースーツの生地に当てはめてみると。。。
ハッキリ言えば。。。
「売れ残り」
ということです。
ハッキリ言っちゃいましたけど。
何も好き好んで丹精込めて作った生地を寝かせるなんてしません。
寝かせれば価値が上がっていくワインとは違います。
なんらかの理由で売れ残っている生地ということになります。
- ビンテージ風と本物のビンテージは別物
正直売れ残りの生地にどれほどの価値を見出すかは個人の価値観に委ねられます。
どこか特定の年代に憧れがあるのであれば、その時代そのものでありますから、それが何であれ価値があるものになります。
また衣類という完成品となれば、デニム製品などは一部のマニアにおいては高額で取引をされているのも事実です。
そう製品ではということになります。
家具だろうがクルマだろうが、ジージャンだろうが特定の年代に制作されたプロダクトになります。
これは以前別の視点からよく書いていることではありますが、現代の衣類というのは非常に賞味期限が短い生鮮食品と化しています。
つまり店頭に並んだ瞬間から即劣化がはじまります。
1か月も定価で売れ残れば、あとは値引きで売り切る体制に入りますのはもうみなさまがご存知のはず。
古き良き時代の衣類として生き残ると価値になっていくということは実に希少なアイテムということになります。
では生地というまだ製品にもなっていない状態だったらどうなるのか??
これがビンテージという言葉とどう結びつくのかということになりますが、ボクはハッキリモノ申してしまう仕立屋ですから、ただの売れ残りってことになってしまいます。
機屋さんも、羅紗屋さんも何も寝かしつけて価値を高めようなんてこれっぽっちも考えていないですし、在庫はどんどん売りさばきたいのが現実です。
それでも何らかの事情で倉庫で眠っていた、またはなかなか買い手がつかない状態が何年も続いていたら、なんとしても現金に換えたいって思うわけであります。
そもそもの価値を見出せない以上古い在庫を積み上げておくと、あくまでも服地ですから経年劣化は避けられませんので、安くしてでも捌いてしまいたい。
それが一部の古着屋さんやどこかの年代好きの仕立屋さんのお目に留まり、買い付けられビンテージ生地として売られているわけであります。
ハマる人にはハマりますが、本当にビンテージとしての価値がある生地は存在するのかどうかなんて分かりませんし、そのビンテージと謳っているほとんどはビンテージとは名ばかりのただのちょっと古くなっただけの売れ残りの残品です。
当然コンディションも保証できないわけでして、ボクはそういう生地は基本扱いません。
だってイジリ倒されてきたクセのある生地は現代の正解となる着こなしに対応する可能性はとても低く、どちらかと言えばコスプレ感が出てしまうかもしれません。
ボクは単に安価で手に入るからといって、手を出さないのはその為でございます。
そしてビンテージ風生地というのはまったくの別物です。
これは非常に優秀です。
過去に作られてきた生地たちのアーカイブからインスピレーションを受け、新たに作成された生地のことをビンテージ風の生地と呼びます。
時代のセンスとしてのビンテージ感を出した生地はとても優秀です。
当時売れていた生地をベースに考えられて、さらに現代の最新の織機で織り上げられているのですから、コンディションも間違いないですからね。
もっともビンテージマニアな仕立屋さん的には当時の糸の使い方や打ち込みなどのほうが好みということもあり、現代の生地は使いたがらないというのもありますので、一概には言えませんが。
ボクは最新のビンテージ風に作成された生地の方が感性がしっくり合いますので、おススメしております。
- まとめ
言葉が乱れていると言いますか、使ったもん勝ち的な時代です。
スマホ一つで膨大な情報を手に入れることが出来るし、好きなことも発信出来る現代は益々この言葉遊びのような商売が増えていくのでしょう。
ボクはこう見えて真面目な仕立屋さんですから、変な小細工とかをしたくないのです。
正しい知識をご提供し、着こなしのお悩みを解決していくこと。
カッコ良く表現するとこんな感じです。
そして何よりも、今こうしている瞬間も続々と新しい生地が生み出されていますので、それら最新のコレクションを活用したほうが楽しいですよね。
選びたい放題なんですから。
ちょっとタイトルとズレちゃいましたが、ビンテージ風の生地は今後ともオススメですよ!
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