ターナー(土方)です。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
今日は少しスーツのパーツにまつわるネタのお話をしましょう。
- 台場ってご存知ですか?
スーツの各パーツには色々な名前が付いています。
その一つに台場というのがあります。
内ポケット周りの構造を表す言葉です。
ジャケットの内側を見て見ると、内ポケット周りから脇の下まで、継ぎはぎなしで生地を使ってる仕立て方法を、台場仕立てと言います。
最近ではコスト削減のため見かけることがめっきり少なくなりました。
それなりに手間と生地が多く使いますので、大量生産品ではもう採用されてないかもしれません。
- これは何の為あるのか?
この台場にはキチンと意味があるのです。
これはスーツという洋服文化が日本に入ってきた当時、このスーツの仕立てを学んだ人たちがこれを良しとしたのが始まりと言われています。
当時のスーツは非常に堅牢な生地を使い、使い捨てるという考え方がほぼない時代でしたら、こうすることで裏側のリペアをしやすくするという考え方があったようです。
また当時は現代のようにスベリの良い裏地も無かったわけですから、このように表地を多く使う台場仕立が基準になっていたのでしょう。
メリットとしては、現代においては余り無いのが正直なことろです。
これは脇の下まで表地を用いる為に、内ポケットにモノを入れた時にヨレ難くなる、表に響きにくくなるという特徴があります。
しかしながら、現代におけるスーツのサイズ感、使い方、文化を考えるにあたって、内ポケットにお財布などの大きなモノを入れることがない前提で作られている関係上、それを活かせる場がないのが現状です。
ただし、この台場仕様であることの意味はあって、キチンとコストをかけて作られたスーツであるという証明、証として認知されています。
裏を見せる時があればですけどね。
また、面白いことにこの台場仕立にこだわるのは日本人特有のようです。
欧州、特に英国のスーツではこの台場仕立はそれほど重要ではないようですね。
面白いですね。
- さて最後に名前の由来は?
諸説ありますが、最有力なのは、あのお台場からきていると言われています。
黒船対策で砲台を備え付けた、出っ張った場所からそう呼ばれるようになったとか。
この台場仕立の文化は欧州よりも日本においてしっかりと根付いているという、ちょっと変わった仕立方法ですね。
ちなみに、現代においては、なんちゃって台場が主流となっています。
見返しから一枚で作るのではなくて、繋げているだけです。
台場としての保形性などのメリットはないですが、むしろフィット感を重視するのでれば、このほうが具合がいいでしょう。
このほうがコストが安く作れるということと、そもそも胸元をそんなにゴワゴワしないほうがしっくりくるよねってことです。
一番安価なのが、台場無しです。
ダメではなくて、もうポケットにモノを入れる時代ではありませんから、これはこれでありでしょう。
体型的に胸板が厚い方などは何もないほうがいいかもしれません。
この内ポケット周りは実に多種多様な仕様が溢れています。
オーダーメイドスーツ業界においては、それ程多くはありませんが、既製服のお店を覗くを、あの手この手で微妙に変化させている台場風の何かがされているスーツがとても多いです。
いいか悪いかは別として、この台場仕様という文化が日本においてはしっかりと息づいているという証拠でしょう。
さて、みなさんのジャケットはどんな仕様になっているでしょうか?
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