土方洋(ヒジカタヒロシ)ニックネームのターナーです。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
襟にポチポチとステッチを入れるカスタマイズがあります。
これがないといけないわけではありませんが、非常に人気があってほとんど標準装備ではないかというくらいに選択されています。
今日はこのステッチのお話。
- 高級スーツから安価な量産品までみんなステッチ入り
現在存在しているあらゆるスーツにこのステッチが入っているのではないでしょうか。
オーダーだけではなく、既製品のそのほとんどが高額品から安価な量産品まであまねく普及しています。
そもそもこのステッチとは何でしょう?
実はこれは単なるアクセントなのです。
よく耐久性が上がるのでしょうか?というご質問を頂きますが、特に変わりません。
これがあるからと言って何かしら寿命が延びる要素はないです。
それでもこれを付けるのには意味があります。
高級感が出る。
そう、今ではあまりにも普及し過ぎてしまいこれがあるか無いかで価値判断をしていた時代と同じ目線で見ることは出来ませんが、このひと手間が価値になります。
これはこれで結構手間がかかっています。
超絶安価品にどうしてこれを採用出来るのか不思議なくらい手間はかかります。
何気なく見慣れてしまい、気が付きにくい部分ではありますがこれがあることによって襟元のアクセントになっているということですね。
- 普及したのには訳がある
現在あることが当たり前のこのステッチですが、ここまで普及したのには訳があります。
昔は全部ハンドステッチと言って、職人が一針一針縫い上げてました。
現在も存在しますが、超絶手間がかかりますのでオーダーの世界でもかなり少数になっています。
それが元々の出発点でしたらから高級な印象になるということではあります。
これをマシンで作成出来るようにしたのがAMFミシンです。
このハンドステッチ風に一本の糸を一筆書きのように襟に縫うことが出来る特殊ミシンが誕生し、多くの縫製工場に採用されてきたことによって一般化していきました。
マシンだから簡単かと言われればそうではなく、これでもかなり大変なんですけどね。
このマシン入れを総じてAMFステッチと呼びます。
ですので、世の中のスーツのほぼ100%がこのAMFステッチと呼んで差し支えないでしょう。
それだけ特殊なミシンなのです。
ではこのAMFって何の略でしょう?
これは「アメリカン・マシン・アンド・ファウンドリー」の略でこれはアメリカの工業メーカーであるAMF社が開発したことからAMFステッチと呼んでいます。
今ではステッチ=AMFというくらい浸透しています。
AMF社はかつてはアメリカで軍産複合体にまで発展した巨大企業でしたから、こうした偉大な発明が出来たのでしょう。
残念ながら今では衰退しボーリング場経営で生き残っているくらいですので、このマシンは作られておりません。
定かではないですが、ジェネリック系はあるはずですがオリジナルと同等の性能は出てないでしょうね。
そういう意味ではAMFステッチというも近い将来価値が出てくるのではないでしょうか。
- まとめ
AMFステッチはかつてのイケイケ時代にアメリカのAMF社が開発した素晴らしいマシンによって入れることが出来るステッチのことってことです。
かつては職人の手作業だったのが機械で効率を上げることが出来るようになったという意味では非常に画期的は発明です。
シューズで言うところのグッドイヤー製法のような感じです。
あまりに普及し過ぎてしまい、たいした価値に感じなくなってしまったかもしれませんが、それでも手間はかかっています。
そしてこのオリジナルマシンも段々とレアリティは上がってくるとなれば、再度見直されていくかもしれませんね。
何気ないそのデティールにはちゃんと意味とロマンがあるんですよ。
ご参考になれば幸いです。(同業者にもね)
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