土方洋(ヒジカタヒロシ)ニックネームのターナーです。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
日本には冠婚葬祭に兼用する礼服文化が存在します。
その黒い服のことを一般的には略礼服といいます。
今日はモーニングやタキシードではなくその礼服について。
無味無感想が基本というお話です。
- 略礼服とは日本独自の文化
日本においてフォーマルというのはいくつか存在し格付けクラス分けがございます。
正礼装・・・日中はモーニング、夜はテイルコート(燕尾服)
準礼装・・・日中ディレクターズスーツ、夜はタキシード(実はタキシードは最上位ではないのです)
略礼装・・・いつでもどこでも全部オーケー!
そもそも日本に洋服文化が流入してきたのが明治になってからですね。
この年代における欧米の服飾文化も第一次産業革命をまたいで急速に変化している過渡期であったために、日本においてはその過渡期の情報が入り込んできました。
そして変化し続けるその未知なる服飾文化を日本の風土風習に合わせてカスタイマイズしていきます。
さらに戦後の混乱期に利便性を求めて文化として定着したのが、ネクタイの色を変えるだけで冠婚葬祭なんにでも使えるという文化が定着して今に至ります。
ちなみになんで礼服は黒なのか知っていますか?
江戸時代の喪服って、時代劇とかで見たご記憶はございませんでしょうか?
白ですよ。
そう、日本の伝統は元々白であり黒ではないんです。
そして欧米でも黒=フォーマルという文化が定着したのも中世ではなく近代なんですよ。
1700年後半から1800年前半(日本の江戸時代後期くらい)に表れたファッショニスタでありダンディズムという言葉の意味を確立させたジョージ・ブライアン・ブランメル(通称ボー・ブランメル)という人がフォーマルは黒という文化を作ったからこそ、今があるというわけですね。
女性が黒になるのはさらに約100年後に表れるココ・シャネルを待たねばなりませんが。
と話が逸れますので、この礼服について。
よくファッションコンサルタントやそれに類する方たちは海外では通じませんとか、やたらを日本の文化である略礼服をディスってますが、そもそも日本で使うので海外とか関係ありませんから仕立屋のプロとして、長年アパレルの世界に身を置いてきたボクが断言しますが、安心してぜひ一着は揃えてくださいね!
だって誰もが略礼服でしょ。
というより逆にお聞きしますが、略礼服なんて恥ずかしいとか言っちゃったら他に何を着ていくのですか?って話になるわけです。
さすがに大使館に呼ばれた来賓クラスともなりますと話は変わってきますが、身内の式典、法事などで正礼装にするほうが違和感があるはずです。
日本の文化として根付いていますから、問題ございません。
ただし、ここからは日本の文化、風習を理解しておく必要があります。
それが長くなってしまいました前置きからの・・・
無味無感想ということです。
無味無感想とは?
なんの面白みも味わいもないさま。「無味」は味がない、面白みがないこと。「乾燥」は物事に潤いや趣がないこと。
-三省堂 新明解四字熟語辞典-
ということです。
日本には侘び寂び(わびさび)といった感覚的な美学、美意識が根付いています。
この欧米人には無い日本の思想とも呼ぶべき侘び寂びの歴史は古く室町時代(1300年代から)くらいには存在していたそうです。
みなさんも感覚的にこの侘び寂びは理解しているはずです。
海外、特に欧米文化では理解できないこの感覚を略礼服に表現しましょうとお伝えしています。
つまり、略礼服とは、派手な可飾、装飾は必要が無く、シンプルに最低限のアイテムだけで質素にしてまいりましょうというのが正しい着こなしのルールとなります。
金属物(カフス、タイバー、ラペルピン)、チーフといったアクセサリーは冠婚ではオッケーですが、葬祭時には使用しない。
礼服そのものはもちろん、間違ってもシャツはボタンダウンなどのアクセントは不要ということです。
- まとめ
欧米と日本の両方の良いところを融合したのが略礼服ということになります。
ぜひとも正しく着こなしていただければ幸いです。
そんな着こなし講座もございます。
どうぞご相談くださいね。
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