ターナー(土方)です。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
テキスタイルとニットの違いってご存知ですか?
今日は少し変わったお話です。
たまにはこんなネタもいいでしょ。
- ニットって何?
最近はジャージ素材のジャケットがカジュアルショップで多数見かけるようになりました。
それがビズスタイルとして少しづつですが、確実に認知されてきています。
こういった素材のことを一般的にニットと呼びます。
日本語で編み物です。
- スーツなどの生地はテキスタイル
通常のスーツ屋さん、ボクなどの仕立屋さんが扱うスーツ、フォーマル、もちろんジャケットなどに使われているのは、テキスタイルといいます。
これを日本語にすると織物と言います。
- 織物と編み物は似て異なるものです
生地のことを大きなくくりで表現するとファブリックとなります。
このファブリック(生地)がテキスタイル(織物)とニット(編み物)に分類されるのです。
つまり織物と編み物は違いますってことになります。
- 通常スーツなどの服地はすべてテキスタイル(織物)です
織機を使い織り上げる服地である必要があるからです。
それは耐久堅牢度が高いということ。
簡単に言えば、丈夫であるということ。
身体を包み込む衣服、まして上着とパンツがセットになっているスーツではすぐに傷んでしまうわけにはいきません。
且つ、人間の動きについてこれる伸縮性、柔軟性が問われるのです。
これらの条件をクリア出来るのは織物だけなのですね。
機械であろうが、手作業であろうが、シンプルに縦横に糸を織り込むのですから、当然と言えば当然なんですね。
- 近年ジャージ系のニット(編み物)のジャケットが増えています
ファストファッション店に代表されるようなカジュアルショップに最近は多く見かけるようになりました。
さらには大手のセレクトショップまでがラインナップするようになりました。
気軽に羽織れるジャケットで伸び伸びで快適でラクチンで、ビジネスで使う人も多いのではないでしょうか。
- これは何を意味するのか?
服飾文化が変化しているというのが、ザックリとした意味になるでしょう。
これをもう少し深読みしていくと、こうなります。
・ヒット商品不在が長引き過ぎて疲弊している
・海外縫製、特にアジアの工場で安価に量産出来る
・カジュアル化の波に上手く載せられる
本来ニット(編み物)というのは、スーツやジャケットの使用に耐えられる素材ではないんです。
少なくともテキスタイル(織物)と同条件で使用した場合に同じ耐久性を持たせることは、縫製面においても生地そのものにおいても出来ないのです。
すぐに痛んじゃいます。フツーはね。
それでも増えているのは、よりフィットした服装が求められていて、ストレッチ性がある素材が増えてきていることが上げられます。
ポリウレタン(ゴムのような化繊)に代表されるような安価にストレッチ性を生み出すことが出来る繊維が一般化してきた現代においては、ジャケットもそれに合わせたユルいスタイルが好まれるのは当然の成り行きなのでしょう。
そして、作る側の考え方として、縫製工場がスーツ専用の工場を使う必要がなく、カジュアル工場で作ることが出来るというのがやはり大きなメリットとなるからでしょう。
実はジャケットと一言で言っても、その出所によって、まったく別物になるのです。
スーツ専用工場と、カジュアル専用工場で作られるジャケットは、その本質がまったく異なります。
スーツ専用工場は簡単にいうと、その作成工程の複雑さから手間、職人のスキル等のコストがどの国で作ろうともかなりかかります。
限界までコストを削りに削りまくってしまいこれ以上は下げられないところまできているのがスーツ専用工場の状況です。
そこでより安価に作ろうと考えると、カジュアル工場にて作ろうってことになります。
作成工程を大幅にカットして、多少アバウトでもニット(編み物)によってジャケット風に作ることが出来ればよりコストダウンが図れるというわけです。
例えばテキスタイル(織物)素材を使ってスーツ専用工場で袖付けをイセ込み(手間のかかる袖付けの仕方のこと)で仕上げるより、カジュアル工場で、ババっと縫い付けるほうが職人のスキルに依存せず、楽に早く作れるのです。
他にもありますけど、そうした背景からニット(編み物)製品のジャケットなどが増えているのでしょう。
- どうもタイトルから大分逸脱してしまいました・・・
オーダーメイドスーツの仕立屋さんとして、ニット(編み物)製品を扱うかどうかの判定をするならば、ボクを始めほとんどのテーラーは扱わないでしょう。
理由は、ニット(編み物)では作成出来ないから。
編み物である以上、縫っているそばから伸びてしまいます。
これは正しく縫い上げることを誇りにしている職人さんからすると、許せないのです。
誤差という範囲を超えてしまいます。
また伸びる生地であるということは、縫う為の糸も伸びる専用の糸を使わなければなりません。
でなければ、縫い糸がブチって切れてしまうでしょう?
それもとても大変なことなのです。
ですから、スーツ専用工場、ないし、オーダーメイドスーツの工房ではニット(編み物)は現状扱えないのが実情ですね。
時代が時代とはいえ、今の流れの一つのこのニット(編み物)製品系のジャケット
本流にはならないでしょうけど、扱いが難しいところです。
- そろそろ、まとめちゃいます
テキスタイル(織物)とニット(編み物)のお話から、業界の裏話にまで発展してしまいました・・・
大切に使うスーツやジャケットの素材はテキスタイル(織物)を使ったモノが最良でしょう。
もうちょっと割り切って、使い切ってもいいかなって思えるラクチンなジャケットならばジャージなどのニット(編み物)でいいと思います。
どちらが装いとして正しいかは、それを扱う人がどうなりたいかってことによって変わります。
キチンとしている人でありたいのか、ユルさを打ち出したいのか?
どちらにも長所短所はありますからね。
それらを上手く利用してみましょう!
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