ターナー(土方)です。
ボクは恵比寿でオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
これからクールビズという軽装化の季節がやってきます。
クールビズだろうが何であろうがスーツは必要であるという人もいらっしゃるでしょう。
また、余りにも軽装化という意味をはき違えてしまって、ただのカジュアル化が進んでしまい、元に戻したいって流れもあるようです。
基本に戻ってるってことですかね。
そこで、スーツを作ろうとした時、何が一番快適なのか?にフォーカスしてみましょうか。
それが、今日のお題のウールに行き着きます。
ウール=羊毛です。
羊の毛です。
これが一番快適です。
神様からのプレゼントなんですよ。
様々な素材、天然繊維、人造繊維、化学繊維などありますが、ウールを超える素材は今現在存在しません。
それは、夏は涼しく、冬は暖かい
この二律背反する性質を持っているからなんですね。
- ウールは涼しい
夏こそウールです。
ウールと言うのは羊の毛です。
この羊の毛というのは、実に良く出来ていて、衣類の素材としてこれ程優良な素材はないのです。
夏場、スーツを着用していてれば暑いです。
汗かきます。
ウールはその時、湿度をコントロールしてくれるんですよ。
人間の髪の毛と同じように、このウールにはスケイル(うろこ)があるんです。
このスケイルは湿度を含むと開く性質があるんです。
しかも、このウールは湿度を繊維の奥まで吸い込まないんです。
だからウールの表面でうまい具合に放湿してくれるのです。
熱がこもり難いという特徴もあります。
熱が逃げないと当然暑いです。
ウールの良いところは、原毛のスライバーという綿菓子のような状態から、様々な糸にすることが出来るんです。
そこから色々な織り方にすることが出来るのです。
夏用に快適なように放熱を重視した織り方にすることが出来るんです。
熱も湿気も逃がしてくれるんですね。
- では他の素材はどうなんでしょうか?
・まずコットン(綿)はどうか?
ムレるので暑いのです。
ウールのようなスケイルがないのと、水分が繊維の奥まで染み込んでしまい、いつまでも乾かなくなります。
シャツならいいですが、コットンスーツともなると、ウールのような様々な糸に出来ない。織り方も密度の濃い織り方にならざるを得ないので、熱が逃げないです。
ホカホカになりたい人向けがコットンですね。
・麻はどうか?
コットンと違ってガサガサしてますから、涼しいです。乾きやすい、ザックリと織り上げることができます。
最大の難点はストレッチ性が皆無なのと、形態保持性がありませんから、シワシワになっちゃいますよね。
ビジネスには中々使いどころが難しいでしょう。
・同じ天然繊維であるモヘア(ヤギの毛)はどうか?
産出量が少なすぎて、安定しない。ウールは南半球が一大産地になっていて安定供給が出来るのですが、モヘアは同じ南半球でも南アフリカなど産地が安定しないのです。
モヘア100%などはほぼ皆無に等しい位レア度抜群です。
素材としては、太陽の紫外線を反射する特質があって涼しさという面においてはウールとは違う風合いでいい感じです。
弱点はシャリシャリした風合いが、人によってはチクチク感じるでしょう。
それとステレッチ性がまったくない。
織り方で多少カバー出来ますが、素材そのものが伸び縮みしないのです。
実はウールはチリチリと縮れているんですね。クリンプといいます。
そのクリンプがいい感じに作用して伸縮があるんです。
その辺がちょっと違いとしてあります。
・シルクはどうか?
蚕から獲れるシルクは滑らかで吸湿性がいいのですが、耐久性に難があります。
特に酸性に弱い。つまり汗による変色、劣化が起きやすいということですね。
・ポリエステルに代表される化学繊維はどうのか?
熱が逃げないので暑いです。
水分は吸い込まない分熱がこもっちゃうんですね。
その分シワにはなり難いので、一長一短ってことですね。
- そろそろまとめ
ウールは最高の素材です。神様からのプレゼントです。
夏場にスーツを作るならウールが最適ですね。
ただし、夏用のウール生地といっても、いろいろありますよ。
涼しさ重視、涼しく感じる重視、あまり涼しくないけどサラサラ重視、全然涼しくないけどツヤツヤ重視とかですね。
その辺のバランスはどのあたりを重視するかを見極めて選んでみましょう。
とりあえずウールなら間違いないって覚えておきましょう!
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