土方洋(ヒジカタヒロシ)ニックネームのターナーです。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
先日ボクが作成しておりますターナースペシャルカットモデルを愛用していただいているTさまのご紹介を致しました。
今日はさらにマニアックなところを画像を交えて深堀してみましょう。
ターナースペシャルカットモデルはパットや芯地を極力外したナポリ様式にしています。
肩はコンパクトにしていますが、じつは全体的には身幅や袖幅はそんなに細くしていないのでピタピタしたスリム系とはちょっと違うところにあるスタイルにしています。
そして表素材の良さを最大限に生かすために芯地の部分を極力排除して柔らかく丸く仕立てています。
ということで、まずセレクトした生地がなかなかにマニアックなハリソンズのインディゴというコレクションです。
このインディゴは綾織でありながら目付230gという超軽量生地に仕上がっています。
コンポジションはウール80%に麻20%という夏のような配合でありながら麻のゴワゴワ感を全く感じない、むしろサラサラでスベスベの気持ちよい風合いになっています。
色柄は良い意味で杢感のカスレ具合がキレイに出ていて、さらにはブラウンベースにブルーのチェックというまるでイタリアのお株を奪うかのような配色にしています。
もちろんヨークシャー州のハダスフィールドという英国の織物の聖地で生産された本物の正規品のお生地です。
仕立ての仕様は当然パットも芯地も極力排除し、さらには裏地も排除した大身返しにしています。
ガチガチに芯地を入れるのであなくふんわりとした構造になります。
もちろん耐久度が落ちますが、正しくケアをしていただければいつまでもこの美しいままに着用しただけます。
これはイタリア南部のいわゆるナポリ系と呼ばれるジャンルに該当します。
日本では古くはアンコンと呼ばれていましたが、それとはちょっと違う今の時代のリラックス仕様になりますね。
この軽いインディゴとの相性も抜群で羽織るとまるで重さを感じないご機嫌な一枚になります。
今度は細かなパーツのお話として衿のフラワーホームがありますが、これを機械入れではなくフルハンドの「ナミダもっとい」にしています。
最近はほとんどみかけなくなった手まつりならでの細かさとさらにはナミダのようなふくらみは機械には出来ない独特な形状にしています。
しかも糸は色を合わせるのではなくあえてのピンクをチョイス。
派手ではないけど、一目でフツーじゃない感を分かる人向けにしっかりとアピールできるようにしています。
そしてラペル幅は約10.0cmとちょっと大きめに。
これも近年のナポリに見られる大人なジャケット仕様です。
ジャケットの袖口ボタンはなんと「1つ」にしています。
最近はほとんどの方が4つはつけますが、これだけで印象が大きく変わりますね。
もちろんそのボタンホールもフラワーホールと同じくピンクで合わせて統一感を出しています。
当然本切羽にしていますので、開閉を自在にしています。
ターナースペシャルカットモデルは実は毎年少しづつ改良を重ねています。
個人的に研究をしていることもありますが、以前作成いただいたことあれば、それをベースにさらに今季モデルはこうしようああしようというカスタム調整も出来るようにしています。
それがオーダーメイドの楽しさであり醍醐味ではないでしょうか。
今回ご納品時に2018年に作成頂いたジャケットをご着用頂きお越しいただきました。
基本的な考え方や方向性は変化させていないのですが、細かいところに手を加えています。
そんな隠し要素的な違いを発見してみるのも面白いでしょう。
オーダーメイドというのは単に作って終わりでないとボクは考えています。
お納めいただいたそこからがスタートでしょう。
喜怒哀楽を一緒に感じて、一緒に人生を共に歩んでもらうことが目的です。
その日々の暮らしのなかでの経験がさらに新しい一着へ導いてくれるのだとボクは思います。
そんな人生の相棒となるジャケットを今回も無事に納めさせていただきました。
改めてありがとうございました!
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