土方洋(ヒジカタヒロシ)ニックネームのターナーです。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
以前にも何度かご紹介しているジャケットの内側の仕様のご紹介です。
スーツというのは表面的な見た目がとても大事ではありますが、現実に使うとなるとその実用性や耐久性にも気を使う必要がありますね。
もちろん現代のスーツやジャケットはそんなにすぐにダメになるようにはなっていませんし、なってしまったら大問題です。
実用性や耐久性というのはそもそも気にしていたらガチに使うビジネススーツではないですしね。
とはいうものの現代のスーツはどうしてもコストカットが最優先になってしまう関係上見た目はキレイな生地にする分、裏側にまでは予算を回せなくなってしまっているモノが多くなってしまっています。
時代的なデザインや文化の変化ということもありますので一概には言えませんが、昭和という時代のスーツを知っている紳士のみなさんからするとあって当然な裏側の仕様があります。
それが「お台場」です。
- お台場仕様は正当なスーツの証
以前にも何度かこの台場について書き記しておりますが、この台場仕様というのは、現代の解釈では正統派スーツの証的なポジションにあるのは間違いありません。
それだけ世の中にはあまり存在しなくなってしまった仕様です。
その昔、スーツが日本に文明開化と共に伝来し始めてきた当時はもちろん既製品は存在していません。
すべてが誂え(アツラエ)という、今でいうオーダメイドです。
しかも安くはないです。
当時日本産のウール生地すら存在しませんし、現代のようなサラサラの裏地もありませんでしたから。
これは当時の日本だけではありませんが、スーツは一生モノという価値観でありましたら、補修やリペアをする前提で作成されていたのですね。
その時にポケット部分を傷みにくくしようと開発されたのが台場です。
現代のように痛んだら買い替えるという思考はありませんので、当時は極めて頑丈に作成されていたものが現代にもアレンジが加えられて存在しています。
確かにメリットはあって、表生地をワキまで回り込むように使うとポケットにモノを入れた時にヨレにくくなるという効能があります。
デメリットは生地を少し多く使いますのでコストが少しかかることでしょうか。
現代におけるこの内ポケットはボディにフィットするスーツスタイルが文化的に定着するようになり始めてから、使うに使えないようになり(今お財布を入れる人なんていませんよね?)コストカットの対象になりました。
流石になんでもポケットに入れる人はもういらっしゃらないかと思いますので、時代と共に縮小していく仕様ということになりますでしょうか。
とはいえ、この台場仕様はずっと一定のニーズがあってオーダーメイドの世界では存在し続けていますね。
台場があってこそのスーツでしょ!ってことですね。
ちなみにこの台場というネーミングはあの地名のお台場からきています。
黒船襲来に備えて作られた砲台跡地、その地形がこの台場にしっくりくるというのを昔の誰かが言い始めて、それがネーミングとして定着したということらしいです。
ノックペンのことをシャープペンというのと同じようなもんですね。
たかがスーツですが、されどスーツ。
歴史に裏打ちされたこのお洋服には時代の流れを感じる仕様が存在します。
そして現代にもまだまだその文化の片鱗を感じることが出来るのです。
そういうロマンという視点でスーツを楽しむのも一興ですね!
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