土方洋(ヒジカタヒロシ)ニックネームのターナーです。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
どこの国の生地が良いのか?
オーダースーツにおいて最大の楽しみである生地のセレクト。
どれを選ぶのか?
どうやって選ぶのか?
そこを辿っていくと必ずどこの国の生地なのかというところに行き着きます。
現実にはほぼ英国かイタリアかという流れになります。
実際には国産もありますし、欧州の他の国もありますし、アジアで言えば中国やインド産なんてのもありますが、あえてそこをチョイスをするのはかなりレアリティの高い玄人志向でしょう。
ということで、実質2つの国のどちらが良いのかという話になっていくわけですね。
これはある意味答えのない永遠のテーマではあります。
持ち家か賃貸かみたいな?感じでしょうか。
さて、どの国の生地が良いのでしょうか?
- ある程度お国柄が生地の質感で表現されている
風呂敷を広げ過ぎちゃうと収拾がつかなくなってしまいますので、英国とイタリアに絞り込んでみましょう。
実際にはほぼ99%はこの二つの国の生地が日本においては流通しておりますので。
では、英国とイタリアのどちらが優れているのか!?
現代のスーツの原型を作り上げ、さらには産業革命で近代服地を生み出した元祖である英国か、それとも現代のマスターピースとも呼ぶべきファッションとしての文化の中心地になっているイタリアか。
さてさて、どちらが優れていると思いますか?
仕立屋さんとしてボクの見解を申し上げるとこうなります。
どちらも優れている
そもそも優劣を競うような品質、クオリティの生地は日本には入ってこないのですし、いまやそんな粗悪品はそのほとんどが絶滅しています。
国やそのブランドの名前を冠した生地である以上、十分すぎるほどの品質を誇っていますので、どちらも優秀です。
それでも違いはあります。
それがお国柄をイメージできる質感です。
ざっくりと説明すると、英国はパリパリしたハリコシ感のある生地が多く、イタリア産の生地はサラサラした柔らかさを感じる生地が多い。
この手の話題をググればいくつでも同じような回答がでてくるはずですが、確かにこれは事実です。
もちろん100%ではないですよ。
その逆な風合いの生地もありますが、だいたいこれに当てはまります。
それは服地に対するアプローチからコンセプトに至るまでの出発点がそもそも違うからです。
原料は同じウール素材でも、まず紡績といって糸にする段階でもう違います。
英国で紡績される糸の多くはそのほとんどが双糸と言って簡単に言えばしめ縄みたいな2本の糸を撚り合わせて一本の糸にしています。
イタリアでももちろんこの双糸は普通なんですが、英国では経糸も緯糸もどちらもこの双糸を使いたがります。
さらに言えば、その糸を撚りあげるのもより多くスピニングをかけるので固めの糸になっています。
その状態の糸で織り上げれば、パリパリした生地になりますよね。
イタリアでは経糸は双糸でも、緯糸は単糸のまま使うのが一般的です。
さらに撚りも英国に比べて甘めにしていますので、みなさんがご存知のツヤ感のある柔らかいあの風合いになるということですね。
ということで、生地に対する価値観がちょっと違う為にその最初の出発点から異なっているのがお国柄として現れているのであります。
よってこのコンセプトで織り上げされている生地の優劣はないのです。
シワになり難くするというこは、ハリコシ感が出てきますから、それは柔らかさとは反比例することになります。
柔らかさを重視すれば、当然パリッとした仕立て映えにはなりません。
トレードオフの関係性があるということです。
そういう意味で生地選びをするならば、どんなスーツにしたいか、もう少し掘り下げるならばどんな状況でどういう自分になりたいかというところから選択していくと良いでしょう。
どうしても日帰り出張が多いのであれば、柔らかすぎるスーツは半日でヨレヨレになってしまいますし、またパーティや舞台に上がるようなシュチュエーションでは光沢のある素材のほうが仕立て映えはしますからね。
そこに色柄であったり、コーディネートの組み合わせだったり、様々なファクターをまとめていくと・・・
実に悩ましいですね(苦笑)
それが楽しいのでありますが。
- まとめ
お国柄に対する印象は確かに生地の風合いに反映されている場合が多いです。
どの国が優れているかというよりも、自分が必要としているスーツにはどんなコンセプトで織り上げられている生地なのかということから選択してみると結構いい感じに仕上がるでしょう。
もちろん自分で全部完結するのは大変ですから、そこはプロに相談するのが一番なのは間違いありません。
ご参考になれば幸いです。
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