ターナー(土方)です。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
今日はスーツを作成するにあたりどんな生地を選べばいいのかというお話です。
その中でもどこまでもマニアックなヒストリー系ではなく、もっと基本的な部分に絞ろうかと思います。
ウールとポリエステルのどちらがいいのか?
ズバリこれ。
以外にこの質問が結構多いのです。
ですから、ボクの個人的見解も踏まえつつどちらがいいのかを紐解いていきましょう。
- ウールとは羊毛という天然繊維、ポリエステルは化学繊維
日本におけるスーツの歴史を見てみてると間違いなくコストとのせめぎ合いの歴史と言っていいでしょう。
古くはバブル崩壊からリーマンショックなど過去幾度となく起こった経済を揺るがす動乱においてメンズスーツはその直撃弾を受けてきました。
デフレの波にもまれ続け、単価は下がる一方です。
単価を下げるということはコスト(原価)を下げるということです。
縫製や製法、その他のコスト削減方法をすべてやり切った感のある十数年前から表題にあるポリエステルを混紡したスーツが一般化し今ではすっかり認知された存在になっています。
今では安価なスーツはまずポリエステル混になっているのではないでしょうか。
最近は中堅クラスもそうなのかな?
誰もが身近に触れているスーツがポリエステルになっているわけです。
ということで簡単に申し上げると元々はコスト削減の方法としてポリエステル素材が投入されて現在にいたるということです。
ポリエステルとは石油から生産される化学繊維でいくつかある化繊の中でももっとも生産量が多くバリエーションに富む繊維なのです。
スーツに適した糸にすることも出来ますし、もちろん安価に出来るというメリットがあるわけです。
近年はハイテク化が進み機能という面でさまざまな付加価値をつけているモノも多くなってきています。
一方ウールは羊さんから刈り取った天然繊維で欧州文化における衣類の歴史の基本中の基本素材です。
スーツ=ウールが一般に認知されているのではないでしょうか。
ではなぜウールがスーツに採用されて続けているのでしょうか?
人類の衣服に使う素材としてもっとも優れた素材だからです。
もっとも何もかもウールで代用出来るわけではありませんが、スーツやそれに類するもの外套(がいとう)といった一番外側に羽織るものはウールが事実上もっとも優れています。
どんなに科学が発達しようがこのウールの特性をそのまま再現することが出来ないからです。
その特性とは何かというと冬は暖かく、夏は涼しいという相反する性能を発揮することです。
ちょっとだけ難しくなってしまいますが、ウールにはスケイル(うろこ)があって湿度によってそのスケイルが開いたり閉じたりします。
また繊維の奥まで水分を吸収することなく表面で流してしまうという元々持って生まれた特性があるので、何もしなくても調湿してくれるわけです。
さらにもう少しだけ付け加えるとクリンプ(縮れ)がありますから、それを利用したナチュラルなストレッチ性もあるわけですね。
これによって同じウールなのに冬物になったり夏物になったりするわけです。
原材料は同じなわけです。
現状のポリエステルには本当の意味での吸湿性という性能はないわけで(そういうセールスポイントを謳うことろもありますが)、それは実は単に繊維の表面を水分が移動しているだけ(繊維に染み込みません)なわけです。
それを利用して保温性を謳っていたり、吸湿速乾という表現もありますが、ウールとは違う概念ということになります。
どちらが正しいかということではないですけどね。
現にヒートテックをはじめとする保温系肌着は化繊が多いでしょう?
これらの特性を踏まえてスーツの生地として考えると、現在の価値で言えば、ウール素材の方が断然質感がよいです。
現在のスーツ生地におけるポリエステルの立ち位置はより良い生地にする為に混紡されるというよりもあくまでもコスト削減の為に使われる場合が多いです。
当然そのコスト削減を目的にした生地である以上、風合いは落ちます。
ごく一部に例えばスキャバルも昨年あたりから信じられないことにポリエステル混紡生地をラインナップにしてきましたが(価格は変わらないけど)やはり風合いが変わります。
- まとめ
オーダースーツという特性上、特にココアッソのクオリティーをもってして仕立てる場合はやはりウール素材をチョイスする方がおススメです。
コストの兼ね合いもありますので、その場合はポリエステル混紡になる場合もありますが、天然繊維の風合いはやはり良いです。
仕立て映えもしますからね。
正確なデータはなくあくまでも個人的な主観ででの判断ですが、耐久堅牢度も変わりません。
要は使い方次第でどうにでもなります。
用途によってはポリエステル混紡が良い場合もあるはずですので、そのあたりはカウンセリングしながら決めていきましょう。
個人的にはやっぱりウールが好きですけどね!
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