ターナー(土方)です。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
オーダーメイドでコートを作成しようと思った時にどの生地をチョイスするのがいいか?
悩ましくもあり楽しくもありますね。
その中で一つオススメを上げるならば、やはり基本中の基本のビーバー仕上げ素材になります。
チェスターコートなどに使われる王道中の王道素材です。
選んで絶対に正解なのがこの生地になるでしょう。
そしてもうご存知だと思いますが、選択肢が二つあります。
ウールかカシミアか?
はたしてどちらが良いでしょうか?
- ウールとカシミアはどう違う?
コート素材ではこのウールかカシミアが主に使われているのはご承知の通りで、このビーバー仕上げの素材も当然このどちらかを選択すことになりますが、その違いはなんでしょうか。
・ウールは羊毛、つまり羊の毛です。
産地は南半球のオーストラリアが一番多いでしょうか?
この羊毛のメリットは何かと言えば、その圧倒的な産出量の多さからくる品質の安定性でしょうか。
羊といってもその品種も沢山あって、その毛の繊細さを保てるような牧場も沢山って、そして刈り取りも年に数回出来ることからコートというよりもスーツやジャケットも含めて、もっとも普及している動物繊維です。
そしてスライバー(刈り取ったわたの状態)の選別から紡績(糸にする工程)まで技術の進歩によって驚くほど繊細な優しい糸をつむぐことも出来るようになり、一部でもカシミアを上回るクラスも存在しています。
ピンもキリもあるということです。
そして、ボクのようなオーダーメイドで使う素材はもちろん最上のものになるというわけです。
・一方のカシミアは何かというと、カシミアヤギの毛です。
そうヤギの毛なんですよ。
名前の通り元々はインドとパキスタンの国境境界線にあるカシミール地方に生息していたのでカシミアと呼ばれているヤギなのです。
そして、これもご存知だとは思いますが、領土問題でデリケートな場所では当然生育できるはずもなく、現在は中国の内モンゴル自治区が最大の産地になっている極めて産出量が少ない、まさに繊維の宝石と呼ばれています。
ちなみになぜ内モンゴル自治区が最大産地になっているのかというと、カシミール地方と気候が近いからだそうですね。
通常コート、ないしカシミア製品に使われるこの毛は、ウールのように刈り取るわけではないんです。
熊手のようなクシで一頭一頭手間をかけて産毛だけを梳いて取り出します。
それだけでも大変ですが、それが出来るのも年に一回だけ、それも春だけしか出来ない。
この産毛というのは寒すぎると剛毛になってしまい、暖かいと生えてこないのです。
内モンゴル自治区の冬の寒さがちょうどその産毛を生み出すのに丁度良く、膨大な手間をかけて一頭当たり本当にわずかに取れるその産毛だけが製品になるのです。
だからこそ希少価値はあるんですよ、本物はね。
もちろんボクが取り扱うカシミアはキチンと管理されている品質のみですからご安心くださいね。
ということで、カシミアの良さははそのレアリティからくるその品質の高さでしょう。
やっぱり良いものは良いということですね。
- ぶっちゃけどちらが良いのか?
どうしてもコストの面で違いは出てしまいますので、予算に応じてがまず一つの答えでしょう。
無理しても結局もったいないから使わないとなってしまっては本末転倒ですからね。
自分が使うことをためらわないバランスでチョイスしましょう。
逆言えば、キチンと立場を表現するならばカシミアを選択するべきでしょう。
あえてランクを下げるべきではない経営者であれば、選択肢は一つということです。
次に、耐久性という面においてはカシミアよりもウール素材の方が上回ります。
厳密に言い切れないですが、もうこの一着だけで冬場は通します的な使い方をするならば、この耐久堅牢性は考慮しなければなりませんし、そうするべきでしょう。
お手入れ次第で変わってきますが、ぞんざいに扱うことになりそうなのであれば選ぶべき素材は一つということです。
- 結論
どちらを選んでも幸せ感は最高です。
どちらが優れているという観点では測れないわけです。
すべてを満たした素材はこの世にありません。
どの項目の優先順位を高くするか、そしてどれかを手放すかというをする必要があるということ。
立場を表現するならカシミアでしょうし、多少無茶した使い方をする可能性があるならばウールの方が安心ですからね。
一つだけ言えるのは、どんな素材をチョイスしようが、ボクが仕立る以上はご機嫌な一着になるということ。
丁度良いサイズ感のコートを羽織ってしまうと、もう他に戻れないでしょう。
いつまでも羽織っていたくなるでしょう。
ついでに自信が湧いてくるので、姿勢が良くなるでしょう。
さてさて、みなさんはどちらに致しましょうか?
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