ターナー(土方)です。
ボクは恵比寿で営業支援スーツというオーダーメイドスーツの仕立屋をしています。
オーダースーツは一生モノなのか?
オーダースーツといっても実に様々で、限界までコストカットを施して、ギリギリ以上にお安くなっているモノもあれば、数十万というプライスがついてくるモノもあります。
オーダーはオーダーでも似て異なるモノが氾濫しているのが現代です。
しかしながらオーダーはオーダーですから、購入された人からすれば同じカテゴリとして認識されている可能性が高いと思います。
ココアッソのオーダーメイドも価格勝負の激安スーツよりちょっとお高くなっております。
コストカットを前提としておりませんので当たり前と言えば当たり前なのですが、かといって無謀な価格設定にはなっていません。
あくまでも現実に実用可能であることが営業支援スーツの目的ですから、そのバランスをもって作成しています。
そこで今日のお題であるオーダースーツは一生モノなのか?
- オーダーメイドに対する誤解
オーダーメイドは自分の為だけにあつらえたオンリーワンな一着であるというのは間違いありません。
そしてその特別感から一生モノとして誤解をされる場合があります。
また一般的な既製品よりもより高耐久性があると思われている場合もあります。
これは一概に言えませんが、誤解を招かないようにキチンとお話をしておかなければなりません。
オーダーメイドは一生モノではないでしょう。
これは様々な使用条件からかなりブレるのでこの限りではありません。
着用頻度が極端に少なければ傷みませんし、たまにいらっしゃるのが毎日ずっと同じモノを着用し続けるという極端な使い方をしていればあっという間にヘタってしまいます。
使い方だけではなく、どのような特性を持った生地にするかによっても大きく変動しますし、人間が動く可動部分を考えないようないわゆるパツパツ系のサイズ感にすれば当然服地、縫い目に大きく負担がかかり痛みは加速度的に進行していくなど様々なファクターがあります。
リアルなシュチュエーションで考えてみましょう。
ビジネススーツとして週一回着用するような理想的なローテーションの着回しをされているとして、ブラッシングやクリーニングにもある程度気を配り、季節の衣替えもされるとします。
仕立屋さんから見れば完璧な使い方です。
その場合だったとしても、ボクの営業支援スーツであろうが、激安オーダスーツであろうが、数十万のスーツであろうが必ずヘタります。
つまり寿命がやってきます。
ボクの場合リフォームも受け付けておりますのでたまにいらっしゃるのが、某一流店で数十万円でお仕立てされたスーツの修理のご依頼。
特に多いのが股ズレといって股の部分が擦り切れてすだれ状に穴が開いてしまっているというトラブル。
人によってはこの股ズレはとても発生しやすいトラブルですね。
はたしてこれはそのスーツが悪いのか?という問題が生じます。
ボクはスーツには何ら問題がないと判定をする場合が多いです。
ボクに限らず高額でお仕立てされている有名テーラーの仕立てミスではないということです。
問題はそのスーツに対するユーザーの認識不足、テーラー側の説明不足からくる問題なのは間違いないでしょう。
要はそのスーツの正しい履き方やメンテナンスの仕方を説明していない、ユーザーも今までのクセを変えることなくそのキチンと採寸したパンツを股ズレするように履き続けてきたからってこと。
一生モノというお題からちょっとそれてしまいましたが、現実にそれは起こりえるトラブルで、誰にでもそういった問題は突然やってくるかもしれません。
現代に存在しうるスーツなどの生地はとても繊細でデリケートに出来ている場合が多いです。
ツヤや滑らかさ、光沢感、またはストレッチ性などの利便性を求めるあまり、耐久性は昭和の時代のゴワゴワの生地より確実に弱いです。
また人間の動く可動範囲は驚くほど大きいのですが、今の時代が求めるデザインからくるサイズ感ではそれに対応しきれないのが現状です。
スポーツウエアのようなフィット感を求めてしまうと、当然その動きに合わせて生地そのもののストレッチ性、または縫い目の引張強度に頼らざるを得なくなり、それはそのままダイレクトに負荷になってしまいます。
誰もがご理解していると思いますが、ポリウレタンが混紡されているストレッチ性のあるスリムフィットパンツを履いていると段々伸びてきますよね。
そういうことがスーツにも当てはまるというわけですね。
オーダースーツはどのような素材でどのように仕立てるかによって、大きく寿命は変わっていきます。
またそれを理解したうえで着用するかによっても変動します。
残念ながらリペアしながら息子に譲り渡すようなスーツは存在しなくはないですが、ほぼ皆無に等しい状況です。
一生モノという概念は現代には通用しないということです。
厳しい現実かもしれませんが、逆言えば、それによって新しいお洋服を手に入れるチャンスが増えるということですよね。
加速度的に変化している現代においては服飾とは文化そのものですから、それに対応出来るように入れ替えるという考え方をもっていてもいいでしょう。
もちろんオーダースーツは、この世に一つしか存在しないオンリーワンですから、キチンと管理メンテナンスをしていただいて、出来るだけ長く付き合っていただければ仕立屋冥利に尽きますけどね。
スーツを仕立てるときにはそういった観点からも選んでみるといいでしょう。
ちなみにボクはそのあたりもキチンとご説明をしています。
たとえそれが好みであったとしても用途に合わない場合はダメ出しをしちゃいます(苦笑)
それが営業支援スーツとしても目的である結果に繋がりますからね。
ベストな一着を導き出す為にボクがいますからね。
今日はちょっと長くなっちゃいましたけど、ボクはそんなことをお話をする仕立屋さんです。
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